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業務委託契約書のチェックポイント|フリーランスの確認項目を解説

フリーランスにとって業務委託契約書は、署名すると報酬や著作権の帰属の扱いを後から変えにくい書類です。

この記事では、署名前に確認したいチェックポイントを、条項ごとに順番に整理します。

法定の数字や制度は公的機関の資料で確認し、条項の実務は大手事業者の解説も参考にしています。

請負と準委任の違い、報酬と支払期日、著作権の帰属、秘密保持、損害賠償、解除、収入印紙、フリーランス新法の明示ルールまで取り上げます。

個人事業主として初めて契約書を受け取った方にも、書き方と読み方の両面で役立つ内容です。

署名前のチェックリストとして、ブックマークや保存をしておくと見返しやすくなります。

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  1. 業務委託契約書の基本を押さえる
    1. 業務委託契約書は必須ではないが作成が望ましい理由
    2. 請負契約と準委任契約の違い
    3. 労働者と判断される基準は実態で決まる
  2. 契約の基本条件で確認したいチェックポイント
    1. 業務範囲が曖昧な契約書の落とし穴
    2. 報酬の支払条件を確認するポイント
    3. 納品後の検収基準を明確にする
    4. 契約期間の自動更新条項を確認する
  3. トラブルに直結する条項のチェックポイント
    1. 著作権の帰属は27条・28条の明記で変わる
    2. 秘密保持条項で確認すべき点
    3. 損害賠償の上限を定めているか
    4. 契約不適合責任の期間
    5. 再委託の可否
    6. 契約の解除条件を確認する
    7. 管轄裁判所の条項を確認する
  4. フリーランス新法で押さえておきたい取引ルール
    1. 書面等で明示される9つの取引条件
    2. 報酬の支払期日は受領日から60日以内
    3. 1か月以上の委託で禁止される7つの行為
    4. 取適法(旧下請法)との関係
  5. 業務委託契約書に収入印紙は必要か
    1. 請負に関する契約書(第2号文書)の印紙税額
    2. 継続的取引の基本契約書は4,000円
    3. 準委任契約でも課税される場合がある
    4. 電子契約なら収入印紙は不要
  6. 契約書チェックの進め方
    1. 署名前に確認する手順
    2. 契約書がもらえないときの対処
    3. 不利な条項の修正を依頼する方法
    4. 無料で相談できる公的窓口
  7. 契約書の作成方法を比較する
    1. 作成方法ごとの特徴を比較する
    2. 状況別に選ぶ作成方法の目安
  8. よくある質問
    1. 口約束でも業務委託契約は成立しますか?
    2. 収入印紙代はどちらが負担しますか?
    3. 職種によって契約書の注意点は変わりますか?
    4. 英文の契約書を求められたらどうすればよいですか?
  9. まとめ

業務委託契約書の基本を押さえる

業務委託契約書は、仕事を頼む側と受ける側の約束を書面に残すための書類です。契約の種類によって支払いが発生する条件や責任の考え方が変わるため、最初に基本を確認します。労働者として扱われるかどうかも、契約書の名前ではなく実態で決まります。

業務委託契約書は必須ではないが作成が望ましい理由

業務委託契約書がなくても、契約そのものは成立します。それでも作成が望ましいのはなぜでしょうか。

freeeの解説によると、口頭でも契約は有効で、業務委託契約書の記載内容や書き方も、法律が一律に定めているわけではありません。

そのうえで書面は、認識の違いを防ぎ、紛争になったときの証拠として役立つと説明されています。

弥生の解説でも、業務委託契約が口頭で成立する点は同じです。契約書の有無で契約の有無が決まるわけではありません。

一般的には、フリーランスや個人事業主が書面を用意しておくと安心なのは、次のような場面です。

  • 報酬額や支払期日を、後から確認できるようにしたいとき
  • 成果物の範囲や納期を、はっきり決めておきたいとき
  • 著作権の帰属や秘密保持の扱いなど、後で揉めやすい点があるとき

取引条件の明示を発注側に求めるフリーランス法の義務については、後の項目で詳しく説明します。

請負契約と準委任契約の違い

弥生の解説によると、業務委託契約は民法上の名称ではなく、請負・委任・準委任のいずれかに当たるとされています。

一般的には、フリーランスの仕事は請負か準委任に当たることが多く、違いによって報酬の考え方が変わります。

項目 請負契約 準委任契約
約束の中身 ある仕事を完成すること(民法632条) 法律行為でない事務の委託(民法656条)
報酬の考え方 成果物の完成に対して支払う 業務を行ったことに対して支払う
成果物が合意と合わないとき 修正や再納品が求められる 完成を約束する契約ではないため、考え方が異なる
印紙税 第2号文書に当たる 原則として課税文書に当たらない

なお、法律行為を委託する契約は委任(民法643条)と呼ばれ、準委任はそれ以外の事務の委託を指します。

印紙税の面では、国税庁のタックスアンサーが、請負の契約書を第2号文書「請負に関する契約書」に当たるとしています。

一般的には、成果物が決まっている制作は請負、相談や運営支援のような継続業務は準委任になりやすい傾向があります。

契約書のタイトルが業務委託契約書でも、中身がどちらに近いかを確認することが大切です。

労働者と判断される基準は実態で決まる

業務委託の契約書を結んでいても、実態が雇用に近いと、労働者として扱われることがあります。

島根労働局の案内によると、労働基準法上の労働者かどうかは、契約の形式や名称にかかわらず、実態を勘案して総合的に判断されます。

厚生労働省の資料は、労働者かどうかの判断の軸を「使用従属性」とし、次の2つの基準で見ています。

  • 他人の指揮監督のもとで労務を提供しているか
  • 報酬が、指揮監督下の労働の対価として支払われているか

このうち、指揮監督下の労働かどうかは、仕事を断れるかなど次の4つの要素で確認されます。

  • 仕事の依頼や業務の指示を断る自由があるか
  • 業務を進めるうえで具体的な指揮監督を受けているか
  • 就業場所や時間などの拘束があるか
  • 代わりの人に任せることができるか(代替性。指揮監督を補強する要素)

このほか、事業者としての性格の有無や、特定の発注元への専属の程度も、判断を補強する要素です。

資料には自己診断用のチェックポイントも付いており、諾否、指揮監督、拘束性、代替性、報酬の労務対償性、資機材等の負担、報酬の額、専属性の8項目で確認します。

一般的には、業務委託契約書に細かな業務指示や勤務時間の拘束が書かれていないかを、署名前に見ておくと安心です。

契約の基本条件で確認したいチェックポイント

業務範囲、報酬、検収、契約期間は、業務委託契約書を読むときに最初に確認したい基本条件です。ここが曖昧だと、仕事が増えたり支払いが遅れたりしても、言い分を示しにくくなります。それぞれ何を見ればよいかを順に整理します。

業務範囲が曖昧な契約書の落とし穴

業務範囲の書き方は、業務委託契約書で受託者の負担を左右する最初のチェックポイントです。

創業手帳の解説は、「業務のサポート」のような抽象的な表現に注意するよう述べています。

具体的な作業内容、成果物の使い方、納品形式、納期が書かれているかを、契約書で確認します。

業務が完成を目的とするのか、作業を行うこと自体を目的とするのかも、はっきりさせておくべきとされています。

範囲が曖昧だと、予期しない業務が追加され、支払額は据え置きのまま作業だけ増えるおそれがあります。

弥生の解説も、契約書に記載する主な項目の一つとして、委託業務の内容を挙げています。

想定外の業務に備え、「その他、甲乙間で別途合意した業務」と追加する例も、同じ解説で紹介されています。

一般的には、「関連する業務」のような包括的な文言がある場合、具体的な業務との線引きを確認しておきます。

報酬の支払条件を確認するポイント

報酬の書き方は、契約書の中でも特に確認したい点です。金額だけでなく、支払いの条件まで見ていきます。

弥生の解説は、報酬の種類を毎月定額型、成果報酬型、単発業務型の3つに分け、時給計算型や成功報酬型もあると述べています。

  • 毎月定額型:毎月一定の金額を支払う形
  • 成果報酬型:成果に応じて報酬が決まる形
  • 単発業務型:案件や成果物ごとに報酬を支払う形

同じ弥生の解説は、税込か税抜かなどの詳細についても、具体的に決めておくよう勧めています。

freeeの解説によると、報酬の条項には、金額、計算方法、支払期日、支払方法を記載します。

個人事業主が業務委託契約書の報酬と支払期日を見るときは、次の8点を順番に確認します。

  1. 報酬の額が明記されているか
  2. 報酬の計算方法が書かれているか
  3. 定額・成果報酬・単発のどの型か
  4. 支払期日が具体的な日付や期限で決まっているか
  5. 着手金、分割払い、納品後の一括払いなどの支払方法
  6. 振込手数料をどちらが負担するか
  7. 交通費や通信費などの経費をどちらが負担するか
  8. 報酬が税込か税抜か

同じfreeeの解説は、旅費や通信費などの経費の負担を決めておくことを挙げ、条項例には振込手数料の負担者を定める一文も含まれています。

支払期日には、フリーランス法が定める上限があります。詳しくは後の項目で説明します。

納品後の検収基準を明確にする

納品した後に検収が終わらないと、仕事が完了したかどうかがはっきりしません。検収の定めは、署名前に確認したいチェックポイントです。

freeeの解説は、業務委託契約書に、納期とあわせて検収期間を定めておくことを勧めています。

検収期間が終わるまで発注側から返事がないときは、納品が完了したとみなす条項の例も紹介されています。

納期に遅れそうなときは新たな納入予定日の指示を受けること、不具合があれば再度納入することも条項の例です。

弥生の解説も、契約書に記載しておくべき主な項目として、納品の期限や検収期間・条件を挙げています。

フリーランス法では、検査をする場合は検査完了日も、発注側が明示すべき取引条件に含まれます。

一般的には、検収の期間が長すぎたり基準が決まっていなかったりすると、完了の時期が見えず、次の仕事の予定も立てにくくなります。

契約期間の自動更新条項を確認する

業務委託契約書の契約期間の条項では、自動更新の有無と、更新しない場合の手続きを確認します。

弥生の解説によると、継続的な業務では契約期間を1年程度に設定し、更新や停止の期限、自動更新の有無を定めるのが一般的です。

freeeの解説の条項例は、期間満了の一定期間前までに書面による意思表示がなければ、同じ条件で延長されるという書き方です。

通知の期限を過ぎると、意図せず契約が続くことがあります。個人事業主は、期限の日付を控えておくことがチェックポイントです。

一般的には、更新するときに金額や業務範囲を見直せるかどうかも、あわせて確認しておくと安心です。

業務委託を更新しない場合の予告については、フリーランス法にも決まりがあります。詳しくは解除条件の項目で説明します。

トラブルに直結する条項のチェックポイント

業務委託契約書の著作権、秘密保持、損害賠償、解除などの条項は、トラブルになったときに効いてくる部分です。普段は読み飛ばしやすいものの、署名前に確認しておくと被害を小さくできます。ここでは7つの条項について、見るべき点を順に整理します。

著作権の帰属は27条・28条の明記で変わる

制作物を納品する仕事では、業務委託契約書の著作権の帰属が特に確認したい条項の一つです。

一般的には、著作権の書き方によって、納品後に自分の制作物をどこまで使えるかが変わります。帰属の定めは丁寧に確認します。

文化庁の資料によると、著作権法61条2項は、譲渡の契約で27条・28条の権利が特掲されていない場合の扱いを定めています。

その場合、27条・28条の権利は、権利を譲渡した側に留保されたものと推定されるため、帰属が分かれることがあります。

同じ資料は、単に「全ての著作権を譲渡する」と書くだけでは足りないと解されている、と述べています。

一般的には、27条・28条は、二次的著作物を作成する権利と、その利用に関わる権利を扱う条文です。

Docusignの条項例では、27条・28条の権利も含めて、検収完了後に権利が受託者から発注側へ移ると定めています。

あわせて、受託者が著作者人格権を発注側などに対して行使しない旨も、条項例に含まれています。

freeeの解説によると、権利は納品と同時に発注側へ移るのが一般的です。受託者に権利を留保する条項例も示されています。

著作権の帰属を決める際は、権利を譲渡するのか、利用を許諾するのかも、確認したい点です。

実績として制作物を公開できるかどうかも、権利の帰属や利用条件とあわせて契約書で決まる場合があります。

秘密保持条項で確認すべき点

秘密保持の条項は、業務の途中で知った情報の扱いを決めるもので、業務委託契約書のチェックポイントの一つです。

Docusignの条項例では、相手から受けた情報を、事前の書面による承諾なく第三者に開示せず、契約の目的外にも使わないと定めています。

同じ条項例では、秘密保持の義務を負わない例外として、次の5つの情報が挙げられています。

  • 開示された時点ですでに公知となっている情報
  • 受託者がすでに保有していたと証明できる情報
  • 正当な権限を持つ第三者から守秘義務なく入手した情報
  • 開示された後に、受け取った側の責任によらず公知となった情報
  • 開示された情報に頼らず、独自に作り出した情報

秘密保持の義務が続く期間も重要です。条項例では、契約が終了してから1年間は義務が続くとされています。

freeeの解説も、秘密保持の義務を契約の終了後に一定の年数だけ続ける書き方を紹介しています。

業務委託契約書の秘密保持に違反して相手に損害を与えると、損害賠償を求められるおそれがあります。損害賠償の定め方は、次の項目で確認します。

損害賠償の上限を定めているか

業務委託契約書の損害賠償の条項では、賠償の範囲と上限が定められているかを見ます。

マネーフォワードの解説には、損害賠償の条項例として、受託者が負う賠償額を、契約に基づいて支払われた委託料の総額までとする書き方が載っています。

freeeの解説は、受託者の責任を直接かつ通常生じる損害に限り、受け取った報酬の一定期間分を上限とする案を挙げています。

一般的には、直接生じた損害と、そこから間接的に生じた損害は、区別して考えられます。

一般的には、損害賠償の上限の定めがないと、受け取る金額を大きく超える賠償を求められる可能性があります。

個人事業主が請け負う、金額の小さな仕事ほど、損害賠償の上限を確認しておく意味が大きくなります。

契約不適合責任の期間

請負の業務委託契約書では、成果物が合意した内容に合わなかった場合の責任の期間を、チェックポイントとして確認します。

弥生の解説は、契約不適合責任を、納品物が合意した内容や品質に合わない場合に受託者が負う責任と説明しています。

請負では、検収後に見つかった欠陥の修正ややり直しを求められる期間を、契約で定めるとされています。

民法にも期間の規定があります。国土交通省の資料に載っている民法637条1項は、要旨が次のとおりです。

注文者が不適合を知った時から1年以内にその旨を請負人に通知しないと、追完や報酬減額の請求、損害賠償の請求、契約の解除ができなくなります。

同条2項は、引渡し時に請負人が不適合を知っていたか、重大な過失で知らなかったときは、この期間制限が適用されないと定めています。

ここで見たのは請負契約の規定の要旨です。例外などの細部は条文で確認し、実際の責任期間は契約書の書き方も含めて確認してください。

再委託の可否

再委託とは、業務委託契約書で受けた仕事の一部または全部を、別の人や会社に任せることです。

マネーフォワードの解説によると、再委託の条項は、禁止する形と、条件つきで認める形があります。

条項例には、発注側の事前の書面による承諾を得た場合に限り、再委託できるという書き方があります。

発注側は受託者のスキルを見て依頼しているため、無断の再委託は発注側の不利益になりうると説明されています。

創業手帳の解説は、契約書に再委託の条項があれば、内容が適切かを判断できるようにするべきとしています。

一般的には、個人事業主がアシスタントや外注を使う予定があるなら、承諾の要件を事前に確認しておくことがチェックポイントです。

契約の解除条件を確認する

解除の条項は、契約をやめるときのルールを決めるもので、受託者にも発注者にも影響する大切なチェックポイントです。

創業手帳の解説は、解除の条項では、解除できる事由を具体的に挙げておくよう勧めています。

「契約違反があったとき」という抽象的な書き方だけでなく、破産の申立てや営業許可の取消しなど、具体的な事由があると安心です。

弥生の解説は、請負は委託者が損害を賠償すればいつでも解除でき、委任・準委任は各当事者がいつでも解除できると説明しています。

freeeの解説は、委任契約は当事者のどちらからでも中途解約できるとして、解除を希望する場合の予告期間を設ける契約を勧めています。

公正取引委員会の特設サイトによると、フリーランス法では、従業員を使用する発注側が6か月以上の業務委託を中途解除または更新しない場合、少なくとも30日前までに予告が必要です。

一般的には、解除したときにそれまでの作業分の支払いをどう精算するかも、決めておくと揉めにくくなります。

管轄裁判所の条項を確認する

業務委託契約書の管轄裁判所の条項は、紛争になったときに、どの裁判所で争うかを決めるものです。

freeeの解説の条項例では、訴訟を扱う裁判所として、特定の地方裁判所を指定しています。

マネーフォワードの解説によると、第一審の専属的合意管轄裁判所を定めるもので、当事者が遠方にある場合ほど重要です。

同じ解説の条項例では、発注側の所在地を管轄する東京地方裁判所が指定されています。

一般的には、指定された裁判所が遠いと、出向く時間や交通費の負担が受託者に重くなります。

自分の所在地から離れた裁判所が指定されていないか、署名前にチェックポイントとして見ておきます。

フリーランス新法で押さえておきたい取引ルール

フリーランス新法は、発注側に取引条件の明示を求め、従業員を使用する発注側には期日内の報酬支払なども求める法律です。業務委託契約書の内容が、法律の求める水準に届いているかを確認できます。ここでは明示事項、支払期日、禁止行為、取適法との関係を整理します。

書面等で明示される9つの取引条件

公正取引委員会の特設サイトによると、フリーランス・事業者間取引適正化等法は2024年11月1日に施行されました。

発注側は、フリーランスに業務委託をしたら、直ちに書面または電磁的方法で取引条件を明示する義務があります。

口頭だけの明示は認められず、書面または電磁的方法(メール、SNSのメッセージ等)で明示します。明示する事項は、次の9つです。

  1. 給付の内容
  2. 報酬の額
  3. 支払期日
  4. 業務委託事業者・フリーランスの名称
  5. 業務委託をした日
  6. 給付を受領する日、または役務の提供を受ける日
  7. 給付を受領する場所、または役務の提供を受ける場所
  8. 検査をする場合は、検査完了日
  9. 現金以外で報酬を支払う場合は、支払方法に関して必要な事項

このうち、検査完了日と現金以外の支払方法は、該当する場合にだけ明示すべき項目です。

厚生労働省の島根労働局の資料も、同じ項目を挙げています。業務委託契約書にこれらが揃っているか、チェックポイントとして照らし合わせてみてください。

揃っていない項目があれば、署名する前に、必要に応じて発注側に追記や書面の再発行を依頼しましょう。

報酬の支払期日は受領日から60日以内

公正取引委員会の特設サイトによると、支払期日は、物品などを受け取った日から数えて60日以内のできる限り短い期間内で定めます。

従業員を使用する発注側は、定めた期日までに報酬を支払う必要があり、契約書の日付が60日の枠内かどうかを確認できます。

再委託の場合は、条件を満たせば、元の委託業務の支払期日から30日以内で定められる例外もあります。

島根労働局の案内も、給付を受領した日から原則60日以内での報酬支払が義務づけられていると説明しています。

契約書の支払期日が、受領した日から数えて65日後のようになっていないか、確認してください。

業務委託契約書の報酬の支払期日が60日の枠を超えていれば、発注側に見直しを相談できます。

1か月以上の委託で禁止される7つの行為

従業員を使用する発注側が1か月以上の業務委託をする場合は、禁止される行為があります。公正取引委員会の特設サイトは、次の7つを挙げています。

一般的には、それぞれ次のような行為を指します。詳しい要件は、特設サイトで確認してください。

  • 受領拒否:発注した成果物の受け取りを一方的に拒むこと
  • 報酬の減額:決めた報酬を後から減らすこと
  • 返品:受け取った成果物を返すこと
  • 買いたたき:通常より著しく低い報酬を不当に決めること
  • 購入・利用強制:指定した物やサービスを買わせたり使わせたりすること
  • 不当な経済上の利益の提供要請:金銭や労務の提供を不当に求めること
  • 不当な給付内容の変更・やり直し:費用を負担せずに内容を変えさせたりやり直させたりすること

業務委託契約書にこれらに近い条項が入っていないか、署名前にチェックポイントとして見ておきます。

取適法(旧下請法)との関係

フリーランスの取引には、これまで見た法律のほかに、取適法が関係する場合もあります。

政府広報オンラインによると、取適法は2026年1月1日に施行され、従来の下請法から大きくルールが見直されました。

正式な題名は「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律」で、旧名称は「下請代金支払遅延等防止法」です。

用語も変わり、「親事業者」は委託事業者、「下請事業者」は中小受託事業者になりました。

対象の基準には、従来の資本金基準に加えて従業員数基準が追加され、いずれかを満たせば適用対象になります。

従業員数の基準は、委託事業者と中小受託事業者それぞれの常時使用する従業員数で判断されます。

製造委託等では委託事業者が300人超かつ中小受託事業者が300人以下、役務提供委託等では委託事業者が100人超かつ中小受託事業者が100人以下の場合です。

国土交通省の資料でも、取適法の施行期日が令和8年1月1日であることと、従業員数の基準が同じ内容で示されています。

政府広報オンラインの案内では、フリーランス法にも当たる取引で両方の法律に違反する場合、原則としてフリーランス法が優先して適用されると説明されています。

なお、フリーランス法の正式名称は「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」で、取適法とは別の法律です。

業務委託契約書に収入印紙は必要か

収入印紙は、契約書が印紙税の課税文書に当たる場合に必要になります。課税されるかどうかは、契約書の名称ではなく中身で決まります。紙で作るか電子で結ぶかによる違いも、あわせて確認します。

請負に関する契約書(第2号文書)の印紙税額

国税庁のタックスアンサーによると、請負についての契約書は、第2号文書「請負に関する契約書」に当たります。

請負とは、ある仕事の完成を約束し、相手方がその報酬を支払うことを約束する契約です。

建設工事のような有形のものだけでなく、警備や清掃などの役務提供も請負に含まれます。

税額は、契約書に記載された契約金額で決まります。1,000万円以下の区分は、次のとおりです。

契約金額 印紙税額
1万円未満 非課税
1万円以上100万円以下 200円
100万円超200万円以下 400円
200万円超300万円以下 1,000円
300万円超500万円以下 2,000円
500万円超1,000万円以下 1万円

契約金額の記載がない契約書は一律200円で、建設工事の請負契約書には軽減措置もあります。1,000万円を超える区分は国税庁のページで確認してください。

継続的取引の基本契約書は4,000円

取引が続く場合に結ぶ基本契約書は、請負の契約書とは別の区分の課税文書になることがあります。

国税庁のタックスアンサーによると、継続的取引の基本となる契約書は第7号文書で、税額は1通につき4,000円です。

ただし、契約書に記載された契約期間が3か月以内で、かつ更新の定めがないものは除かれます。

除外されるかどうかは、契約期間が3か月以内かどうかと、更新の定めがあるかどうかの2点で見ます。

一般的には、この2点を両方満たさなければ除外されないため、たとえば期間が6か月の基本契約書は除外の対象になりません。

一般的には、請負にあたる業務を継続して頼む基本契約書は、この区分が関係することがあります。

自分の業務委託契約書がどの区分に当たるかは、国税庁の案内や税務署で確認するのが確実です。

準委任契約でも課税される場合がある

準委任契約なら印紙は不要と考える個人事業主の方もいますが、契約書の中身によっては課税されます。

弥生の解説によると、準委任などは原則として印紙が不要です。ただし、無体財産権の譲渡や請負的な要素を含む場合は、課税文書とみなされることがあります。

国税庁のタックスアンサーは、文書の内容の判断を、名称や形式的な文言ではなく、実質的な意味を汲み取って行うと述べています。

同じ案内によると、課税文書とは、次の3つのすべてに当てはまる文書をいいます。課税の判断は、文書の名称ではなく内容で行われます。

  • 印紙税法別表第1に掲げられた20種類の文書により証されるべき事項が記載されている
  • 当事者間で課税事項を証明する目的で作成された
  • 非課税文書ではない

一般的には、成果物の完成を約束する内容が含まれていれば、請負としての扱いが問題になりえます。タイトルだけで判断せず、条項の中身を確認しましょう。

電子契約なら収入印紙は不要

電子契約で結ぶ場合、収入印紙は必要になるのでしょうか。国税庁の資料から確認します。

国税庁の電磁的記録に関する質疑応答は、印紙税の課税対象は課税物件表に掲げられた文書であり、電磁的記録は文書に含まれないため課税されないとしています。

福岡国税局の文書回答(平成20年)は、請負の注文請書を電子メールで送る場合の印紙税を扱っています。

照会者の見解は、注文請書の現物の交付に替えて、PDFファイル等に変換したものを電子メールで送信しただけなら、課税文書を作成したことにならないというものです。

理由は、注文請書の現物が交付されない以上、ファクシミリで送信する場合と同様に扱えるというものです。

これに対し、事実関係を前提とする限り「貴見のとおりで差し支えありません」と回答されています。

回答は、事実関係が異なる場合や新たな事実が生じた場合には、異なる課税関係が生ずることがあるとも述べています。

国税庁の質疑応答は、コミットメントライン契約に関するものですが、同じ考え方を示しています。

ファクシミリや電子メールで文書を提出しても、実際には文書が交付されないため、課税の原因は発生しないとされています。

ただし、送信した後に改めて正本となる文書を交付すれば、その正本は課税文書になります。

紙に印刷して署名・交付する運用にすると、課税対象になりうるため、個人事業主も注意してください。

契約書チェックの進め方

契約書は、受け取ってから署名するまでの手順を決めておくと、確認漏れを減らせます。契約書がもらえないときや、不利な条項が見つかったときの対処も押さえておきましょう。自分で判断しきれない場合の公的な相談窓口もあります。

署名前に確認する手順

フリーランスが業務委託契約書を署名前に確認するチェックポイントは、順番を決めて進めると漏れが減ります。

創業手帳の解説は、契約の流れを、打ち合わせ、契約書の作成、内容確認・修正、締結の順に紹介しています。

契約書は委託者が作成することが多く、個人事業主などの受託者は、届いた契約書案を確認する立場になります。

案が届いたら、次の4つの順で確認し、振込手数料の負担などの細かな点も見逃さないようにします。

  1. 契約書案を受け取り、全体を通して読む
  2. 打ち合わせで決めた業務範囲・報酬・納期と照らし合わせる
  3. 著作権の帰属・秘密保持・損害賠償・解除など、責任に関わる条項を確認する
  4. 不明点はメールなど記録に残る形で確認し、修正があれば再確認してから署名する

締結のときは、同じ内容の契約書を2部作り、双方が1部ずつ保管します。保管は契約期間中、必要です。

契約書がもらえないときの対処

個人事業主やフリーランスは、取引先から業務委託契約書が出てこないまま、仕事が先に進んでしまうことがあります。

弥生の解説のとおり、口頭でも契約は成立するため、契約書がなくても約束は有効です。

ただし、書面がないと条件の内容を証明しにくくなります。まずは、取引条件を残す手立てを取ります。

公正取引委員会の特設サイトによると、発注側には、取引条件を書面または電磁的方法で明示する義務があり、口頭のみの明示は認められません。

この決まりは、フリーランス法の対象となる取引に限られます。そのうえで、次のように動きます。

  • 発注メールやチャットのやり取りを、削除せずに保存する
  • 報酬・支払期日・納期・業務範囲を、書面かメールで改めて送ってもらうよう依頼する
  • それでも出てこない場合は、公的な窓口に相談する

不利な条項の修正を依頼する方法

業務委託契約書に不利な条項を見つけたときは、感情的にならず、具体的に修正を依頼します。

創業手帳の解説によると、打ち合わせで決めた内容と契約書の記載が一致しているかを突き合わせます。

食い違いや納得できない点があれば、修正を依頼し、修正版も改めて確認してから締結に進みます。

一般的には、修正してほしい条項と希望する書き方を示し、理由も添えると、相手も検討しやすくなります。

報酬と支払期日、著作権の帰属、秘密保持、損害賠償の上限など、譲れない点に優先順位をつけておくと交渉が進みます。

合意した修正内容は、メールなどの記録に残し、修正後の契約書に反映されているかを確認します。

無料で相談できる公的窓口

業務委託契約書の内容に不安があるときは、フリーランス向けの公的な窓口に相談する方法があります。

フリーランス・トラブル110番は、厚生労働省の委託事業で、料金は一切かかりません。

匿名でも相談でき、必要に応じてWeb(ビデオ通話)での相談もできますが、完全予約制です。

電話は0120-532-110で、受付時間は9時30分から16時30分(土日祝日を除く)と案内されています。

受付時間は変わることがあるため、利用前に公式サイトで確認してください。和解あっせんの手続きも無料です。

注意したいのは、業務委託契約書の相談は受けられても、網羅的なリーガルチェックや契約書の作成はできないことです。

公正取引委員会の特設サイトによると、この窓口は2020年11月から運営されています。

フリーランスや個人事業主が、契約上や仕事上のトラブルについて、弁護士に無料で相談できる窓口です。

契約書の内容で迷ったときや、取引先とのトラブルになりそうなときは、早めに相談してみてください。

契約書の作成方法を比較する

契約書の作成方法には、公的な参考例を使う方法、相手方の案を確認する方法、専門家に相談する方法などがあります。それぞれ向いている状況と、注意したい点が違います。比較表で特徴を整理したうえで、状況別の目安を紹介します。

作成方法ごとの特徴を比較する

個人事業主が業務委託契約書の書き方を調べるときは、まず参考例の構成を知っておくと理解しやすくなります。

厚生労働省の在宅ワーク契約書参考例は、基本契約にあたる業務委託契約書と、個別契約にあたる発注書に分ける構成例を示しています。

業務委託契約書には、委託業務、契約期間、契約の解除、報酬等、秘密保持などの条項が並んでいます。

発注書には、委託内容、契約金額、履行期限、納品先・方法、成果物の検査、諸経費の取扱い、権利の帰属の項目があります。

この参考例は平成表記のため、制度の改正を踏まえた現行法への対応は、別に確認する必要があります。

作成方法 特徴 注意したい点
公的な参考例を使う 基本契約と個別契約(発注書)に分けた構成を確認できる 平成表記で、現行法への対応は別に確認が必要
相手方が用意した契約書を確認する 受託側は、内容の確認と修正依頼が中心になる 相手に有利な条項が入っていないか、自分で読む必要がある
弁護士など専門家に相談する 秘密保持や損害賠償の上限、著作権の帰属など、個別の事情に合わせた条項や修正案を相談できる 費用がかかり、依頼先によって異なる
公的な相談窓口を使う 契約書の内容に関する相談を、無料で受けられる 契約書の作成や網羅的なリーガルチェックは対象外

フリーランス・トラブル110番の相談担当弁護士は、直接フリーランスの代理人になったり、相手方と交渉したりはできません。

どの方法でも、課税文書に当たるかどうかは、国税庁のタックスアンサーのとおり、名称ではなく内容で判断されます。

一般的には、紙で作るか電子で結ぶかによっても、収入印紙の要否が変わるため、作成方法とあわせて検討します。

状況別に選ぶ作成方法の目安

作成方法は、契約の状況によって選び方が変わります。こんな人におすすめという目安を、3つの状況で整理します。

  • 初めて契約書を結ぶ個人事業主には、公的な参考例で書き方の構成を知り、相手方の案を項目ごとに確認する方法が向いています。
  • 金額や損害賠償の責任の範囲が大きい仕事では、専門家への相談を検討する価値があります。
  • 相手方の契約書を受け取った人は、修正を依頼する準備をして、不明点を窓口に相談するとよいでしょう。

どの作成方法を選ぶか検討するときに、あわせて比較しておきたいポイントは、次の4つです。

  • 費用:公的な参考例や相談窓口は無料で使えるが、専門家への相談には費用がかかる
  • 時間:自分で読み込む時間のほか、窓口の受付時間や予約の手間もかかる
  • 個別の事情への対応:参考例は一般的な構成のため、自分の仕事に合った助言は専門家向き
  • 法改正への対応:参考例は平成表記のため、現行法に合っているかを別に確認する

一般的には、参考例で構成を確認し、気になる条項だけ専門家に相談する組み合わせも考えられます。

よくある質問

ここでは、業務委託契約書について疑問を持たれやすい点を4つ取り上げます。口約束の扱い、収入印紙の負担、職種別の注意点、英文契約書の順に答えます。

口約束でも業務委託契約は成立しますか?

成立します。弥生の解説によると、業務委託契約は口頭でも成立します。ただし、契約書がないと金額や納期などの条件が曖昧になりやすく、後から内容を証明しにくくなります。契約書は、トラブルのときに契約内容の証拠としても役立ちます。メールなどに条件を残し、書面にしてもらうよう依頼すると安心です。

収入印紙代はどちらが負担しますか?

弥生の解説によると、契約書を2部作る場合は双方が負担するケースが多く、1部だけ作る場合は作成者が負担するのが一般的です。電子契約書は課税対象外です。紙の契約書にする場合は、課税文書に当たるかどうかを、契約書の中身で確認します。負担の割合は、契約書で取り決めておくと個人事業主も安心です。

職種によって契約書の注意点は変わりますか?

変わります。freeeの解説によると、エンジニアは、アジャイル開発のように仕様変更が多い場合は準委任が適するとされ、自作のライブラリや既存コードの権利関係、仕様変更、保守の扱いも確認が必要です。Webデザイナーは、著作者人格権の不行使、修正回数と範囲、素材、ポートフォリオへの掲載などを定めておきます。Webディレクターは準委任を結ぶケースが多く、偽装請負と見なされかねない点にも注意が必要です。業務範囲は具体的に書いておきます。

英文の契約書を求められたらどうすればよいですか?

Docusignの解説によると、英文の契約書は確認に時間がかかり、日本語の契約書と表現が異なることがあります。当事者ごとに適用される法律が異なる場合もあるため、準拠法と管轄を慎重に確認し、国際法務に通じた弁護士にレビューを依頼するのがおすすめです。一般的には、署名の期限に余裕を持って依頼すると、確認の時間を確保しやすくなります。

まとめ

業務委託契約書は、署名する前に、業務範囲、報酬、著作権の帰属、秘密保持、解除条件、収入印紙を確認することが、トラブルを防ぐ近道です。契約の種類や労働者性の考え方を押さえると、条項の意味が読み取りやすくなります。フリーランス新法の明示ルールも、契約書を点検する物差しになります。

  • 契約書がなくても契約は成立するが、書面があると証拠になる
  • 報酬の支払期日は、受領日から60日以内に収まっているかを見る
  • 著作権の帰属は、27条・28条の権利を含めて明記されているかを見る
  • 秘密保持と損害賠償は、期間と上限が決まっているかをチェックポイントとして見る
  • 収入印紙は、契約書の中身で決まり、電子契約なら不要になる
  • 迷ったときは、公的な窓口に相談する

この記事では、公正取引委員会、厚生労働省、国税庁、文化庁、国土交通省、政府広報オンラインの資料を参照しました。

条項の実務については、freee、弥生、マネーフォワード、創業手帳、Docusignの解説も参考にしました。

本記事は一般的な情報の整理であり、法的な助言ではありません。個別の契約は、弁護士などの専門家に相談してください。

公的窓口のフリーランス・トラブル110番も、契約書の作成や網羅的なリーガルチェックは対象外です。

個人事業主の方も、署名前のチェックリストとして保存し、同じ悩みを持つ知人にも共有してください。書き方に迷ったときは、公的な相談窓口の利用も検討しましょう。

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