個人事業主やフリーランスは、一般的に厚生年金に加入しません。そのため、将来の年金を上乗せする手段を自分で考える必要があります。
その選択肢の1つが、国民年金に月400円を足して納める付加年金です。
この記事では、付加年金の仕組み、元が取れる年数、国民年金基金やiDeCoとの関係、申込み方法を、公的機関の情報をもとに整理します。
金額や制度は、令和8年度(2026年度)に公表されている内容を前提にしています。
付加年金とは?個人事業主が国民年金に上乗せできる制度
付加年金は、国民年金の保険料に月400円の付加保険料を足して納めることで、将来の老齢基礎年金に年金が上乗せされる制度です。
上乗せ額は納めた月数で決まり、受け取りは終身です。個人事業主が少ない負担で始められる点が特徴です。
付加保険料は月400円・年金額は「200円×納付月数」
付加保険料は、定額の国民年金保険料に上乗せして納める月額400円です。日本年金機構の付加年金のページによると、付加年金額は「200円×付加保険料納付月数」で計算されます。
付加年金は、老齢基礎年金と合わせて受け取れる終身年金です。国民年金基金連合会も、付加保険料を月400円と案内しています(国民年金基金連合会のよくあるご質問)。
たとえば10年間(120か月)納めると、付加年金は年額2万4,000円(200円×120か月)になります。
加入できる人・できない人
付加保険料を納められるのは、国民年金の第1号被保険者と、65歳未満の任意加入被保険者です。日本年金機構のQ&Aでは、次の方は納められないとされています。
- 保険料の全額免除・一部免除・納付猶予・学生納付特例を受けている方
- 国民年金基金に加入している方
第2号被保険者である会社員などは、納められる対象に含まれません。個人事業主やフリーランスは、一般的に第1号被保険者として対象になります。
付加年金は何年で元が取れる?損益分岐と受給額の目安
付加年金は、年金を2年以上受け取ると、納めた付加保険料以上の年金を受け取れる計算です。
納付期間が長いほど上乗せ額も増えますが、金額は定額で、物価スライドはありません。
ここでは、付加年金の損益分岐の考え方と、納付期間別の目安を整理します。
受給2年で元が取れる計算
付加保険料は月400円なので、1年間(12か月)納めると4,800円です。これに対して、付加年金は年額2,400円(200円×12か月)です。
つまり、付加年金の損益分岐は、年金を受け取り始めてから2年です。納めた付加保険料と同額になります。日本年金機構の付加保険料の納付のページでも、2年以上受け取ると納付した付加保険料以上の年金を受け取れると説明されています。
同ページの例では、20歳から60歳までの40年間納めた場合、付加年金は年額9万6,000円です。老齢基礎年金の84万7,300円と合わせて、年額94万3,300円になります。
この84万7,300円は、令和8年度の定額保険料を40年間納めた、昭和31年4月2日以後生まれの方の場合の金額です。
納付期間別の保険料総額と年金額・令和8年度の月額負担
令和8年度の国民年金保険料は月額17,920円です(日本年金機構の国民年金保険料のページ)。付加保険料を足すと、毎月の納付額は18,320円になります。
付加保険料だけを見ると、年間の追加負担は4,800円です。納付期間別の目安は、次のとおりです。
| 納付期間 | 納付月数 | 付加保険料の総額 | 付加年金(年額) |
|---|---|---|---|
| 10年 | 120か月 | 4万8,000円 | 2万4,000円 |
| 20年 | 240か月 | 9万6,000円 | 4万8,000円 |
| 30年 | 360か月 | 14万4,000円 | 7万2,000円 |
| 40年 | 480か月 | 19万2,000円 | 9万6,000円 |
上の表は、月額400円と「200円×納付月数」の算式から計算した試算です。実際の金額は、日本年金機構の案内で確認してください。
デメリットと注意点(物価スライドなし・納付期間による増額幅)
付加年金は定額で、物価スライド(増額・減額)がありません。日本年金機構の付加年金のページにも、その旨が示されています。
物価が上がっても上乗せ額は変わらないため、将来の生活費をまかなう主役にはなりにくい制度です。
納付期間が短いと、上乗せ額も小さくなります。付加年金だけで足りるかを、必要な老後資金と照らして考えましょう。
個人事業主が付加年金を始めるか判断するには、自分の納付期間で損益分岐を試算するのが有効です。この記事を保存しておくと、あとで見返せます。
付加年金と国民年金基金の違い・併用できない理由
付加年金と国民年金基金は、どちらも国民年金に上乗せする制度ですが、同時には使えません。
国民年金基金の1口目の給付に、付加年金に相当する部分が含まれているためです。
やめやすさなどの違いを比べたうえで、どちらを選ぶかを決めます。
同時加入できない理由(基金の1口目に付加年金相当が含まれる)
国民年金基金連合会によると、基金の1口目の給付には国民年金の付加年金相当が含まれています。そのため、基金に加入している方は付加保険料を納められません(国民年金基金連合会のよくあるご質問)。
日本年金機構も、国民年金基金に加入中の方は付加保険料を納付できないと案内しています(付加年金のページ)。
つまり、付加年金と国民年金基金は同時に使えず、どちらか一方を選ぶことになります。
違いを比較表で整理(掛金・柔軟性・脱退可否)
2つの制度の違いを、公的機関の情報で確認できる範囲で表にまとめます。
| 項目 | 付加年金 | 国民年金基金 |
|---|---|---|
| 掛金・保険料 | 月額400円の付加保険料 | 基金や口数などで異なる(基金の掛金月額表で確認) |
| 年金額 | 200円×付加保険料納付月数 | 1口目の給付に付加年金相当を含む |
| やめるとき | 申出書の提出でやめられる | いったん加入すると任意に脱退できない |
| 物価スライド | なし(定額) | 基金連合会で確認 |
| 併用 | 国民年金基金とは併用できない | 付加保険料とは併用できない |
国民年金基金連合会のよくあるご質問では、基金はいったん加入すると自分の都合で任意に脱退できないと説明されています。加入前に、掛金の負担を十分に確認しましょう。
付加年金から基金へ切り替える考え方
付加保険料は、申出書を提出すれば納付をやめられます(日本年金機構の付加保険料の納付のページ)。
そのため、まず付加年金から始め、家計に余裕が出たら基金を検討するという順番も考えられます。
基金に加入すると付加保険料は納められなくなります。切り替える場合は、基金連合会や年金事務所で手続きを確認してください。
付加年金とiDeCoは併用できる?掛金上限の考え方
付加年金とiDeCoは、同時に加入できます。ただし、iDeCoの上限額は付加保険料を含む合算枠で決まります。
2026年12月1日には、第1号加入者の上限が引き上げられる予定です。
併用は可能・上限は付加保険料を含む合算枠
日本年金機構は、個人型確定拠出年金(iDeCo)と付加年金は同時に加入できると案内しています。ただし、iDeCoの拠出額によっては付加保険料と併用できない場合があります(付加保険料の納付のページ)。
iDeCo公式サイトでは、自営業者(第1号被保険者)の拠出限度額は月額6.8万円とされ、国民年金基金または付加保険料との合算枠です。掛金は月5,000円以上、1,000円単位で設定できます(iDeCo公式サイト)。
2026年12月施行予定の上限引き上げ(6.8万円→7.5万円)
厚生労働省によると、第1号加入者のiDeCoと国民年金基金との共通拠出限度額は、2026年12月1日施行予定で月額7.5万円に引き上げられます(厚生労働省「2025年の制度改正」)。
現行の6.8万円からは、月額7,000円の引き上げです。
本記事の確認時点(2026年10月)では、引き上げは施行前です。実際の適用は、施行後の公式情報で確認してください。
施行後に付加保険料と併用する場合の扱いは、加入している運営管理機関(金融機関)にも確認すると安心です。
付加保険料400円を踏まえた掛金設定の目安と確認先
上限は付加保険料を含む合算枠です。そのため、iDeCoの掛金は「上限額から付加保険料の400円を引いた額」を目安に、1,000円単位で収まる範囲で考えます。
付加年金と同時に加入する場合の具体的な拠出限度額は、iDeCoの加入手続きをした運営管理機関で確認してください。
付加年金は月400円と負担が小さい制度です。iDeCoの掛金枠を使い切る場合は、併用できるかを事前に確認しておきましょう。
付加年金の申込み方法とやめ方
付加年金の申込みは、国民年金被保険者関係届書(申出書)を市区町村役場または年金事務所に提出します。
納付は申出をした月分から始まり、さかのぼって納めることはできません。
やめたいときも、同じ申出書で手続きできます。
申込先・必要書類・納付開始月
日本年金機構の案内では、提出書類は国民年金被保険者関係届書(申出書)です。提出先は、市(区)役所、町村役場、年金事務所です。電子申請も利用できます(付加保険料の納付のページ)。
付加保険料の納付は、申出をした日の属する月分から始まります。郵送の場合は、提出先が申出書を受け付けた日の属する月分からです。
たとえば令和8年4月中に申し出ると、4月分から納付できます。3月分以前にさかのぼって納めることはできません。
納付期限・さかのぼれない点・納め忘れ時の扱い・前納割引
付加保険料の納付期限は、納付対象月の翌月末日です。期限を過ぎても、期限から2年間は付加保険料を納められます(付加保険料の納付のページ)。
ただし、納付の開始を申出前の月にさかのぼることはできません。始める月は、申出の月で決まります。
付加保険料を前納する場合は、前納する期間に応じて割引を受けられます。割引額は、日本年金機構の「国民年金保険料の前納」ページで確認できます。
付加保険料をやめたいとき
付加保険料の納付をやめるときも、国民年金被保険者関係届書(申出書)を提出します。申出をした月の前月から、付加保険料を納める方ではなくなります(付加保険料の納付のページ)。
家計の状況が変わったときは、申出で見直せます。手続きは、お住まいの市区町村役場か年金事務所で相談できます。
付加年金が向いている人・他制度と比べたいポイント
付加年金は、月々の負担を抑えて年金を増やしたい個人事業主に向く制度です。
一方で、上乗せ額は小さく、国民年金基金とは併用できません。
自分の家計と目標額を踏まえて、他制度との役割分担を考えましょう。
こんな人におすすめ
- 毎月の負担を月400円に抑えて、年金を増やしたい個人事業主
- まず小さく始めて、家計に合わせて見直したい方
- iDeCoなど他の制度と並行して準備したい方
- 国民年金基金の掛金負担が重いと感じる方
一方、保険料の免除や納付猶予を受けている間や、国民年金基金に加入している間は、付加保険料を納められません。
検討時に比較したいポイント(掛金の余力・受取時期・iDeCo・基金との役割分担)
- 掛金の余力:付加年金は月400円。基金は掛金月額表で負担を確認する
- 受取額の規模:付加年金だけで必要額に届くかを、老後の生活費と比べる
- やめやすさ:付加年金は申出でやめられるが、基金は任意に脱退できない
- iDeCoとの枠:上限は付加保険料を含む合算枠で、その範囲で配分する
- その他の準備:付加年金以外の老後資金づくりも並行して考える
比較するときは、まず自分が付加保険料を納められる月数を数えてみましょう。納付月数が、上乗せ額の大きさを決めます。
付加年金のよくある質問
Q. 付加年金は途中でやめたり再開したりできる?
やめるときは、国民年金被保険者関係届書(申出書)を提出します。申出をした月の前月から、付加保険料を納める方ではなくなります。付加保険料を納めたいときは申出が必要とされているため、再開する場合もあらためて申出書で手続きします(日本年金機構)。
Q. 国民年金保険料の免除中でも付加年金に入れる?
保険料の全額免除・一部免除・納付猶予・学生納付特例を受けている方は、付加保険料を納められません。産前産後期間の免除などの例外については、日本年金機構の案内で確認してください(日本年金機構のQ&A)。
Q. 会社員になったら付加保険料はどうなる?
付加保険料を納められるのは、国民年金の第1号被保険者と、65歳未満の任意加入被保険者です。第2号被保険者になる会社員などは、納められる対象に含まれません。手続きの詳細は、年金事務所で確認してください(日本年金機構のQ&A)。
Q. 国民年金基金に入っていても付加保険料を納められる?
納められません。基金の1口目の給付には国民年金の付加年金相当が含まれているため、基金に加入している方は付加保険料を納められないと案内されています(国民年金基金連合会)。
Q. 付加年金は物価に応じて増減する?
増減しません。付加年金は定額で、物価スライド(増額・減額)がありません。老齢基礎年金と合わせて受け取れる終身年金です(日本年金機構)。
まとめ
付加年金は、月400円の付加保険料で、将来の年金が「200円×納付月数」増える制度です。終身で受け取れ、2年以上受け取ると元が取れる計算です。
国民年金基金とは併用できませんが、iDeCoとは同時に加入できます。iDeCoの上限は付加保険料を含む合算枠です。
申込みもやめるときも、申出書の提出で手続きできます。納付は申出をした月分からです。
本記事の数値と制度は、日本年金機構、国民年金基金連合会、厚生労働省、iDeCo公式サイトの情報に基づいています。制度は改正されることがあるため、手続き前に最新の公式情報を確認してください。
迷ったときは、お住まいの市区町村役場か年金事務所に相談すると安心です。
